オフショア法人は、登記した国以外の全世界で事業を行うことができる国際的な法人です。オンショア(国内法人)とは異なり、国内の人々と事業を行うことはできません。オフショア法人は、主にタックスヘイブン(租税回避地)で設立されることが多く、投資や事業によって得た収益に対してほとんどの場合税金が掛からない、もしくは低税率のため、税務申告が不要なケースが殆どです。また、設立されるオフショア法人の取締役や株主の情報が非公開であったり、資産も情報が保護されるなど、プライバシーに関する情報機密性が非常に高いことも特徴です。これら、節税と機密保持という大きなメリットのおかげで、タックスヘイブンと呼ばれる国や地域でオフショア法人が設立されています。
しかし、過度な節税によって不公平感が露わになり、また、多くのタックスヘイブンで利用できるノミニー制度が悪用され、脱税などに利用されたことで、G20などの各国が警戒感を強め、新たなルールを設けています。さらに、経済協力開発機構(OECD)は、各国の銀行口座など情報を自動的に共有できる仕組みを設け、多くの国や地域がその情報を交換しています。日本でも、タックスヘイブン対策税制のその対象や定義の解釈を拡大することで、タックスヘイブンで設立された子会社が得た利益を自国の親会社の利益と合算して課税できるようになっています。これらのことからもわかるように、簡単には節税ができなくなっているのは、大きなデメリットです。
また、日本でもタックスヘイブン対策税制が変更されているように、その税制は複雑に進化しています。そのため、税制の理解やその対応も同様に複雑になっています。これにより、更なるデメリットとして、複雑な財務処理を実施する必要性が生じています。複雑な財務処理は、法人税などの所得税だけに限らず、消費税なども含め、税全般において必要になっているため、税の専門家である税理士のサポートは欠かせません。税理士のサポートは居住国にだけに限らず、オフショア法人を設立した現地の専門家にも依頼する必要がありますので、そのコストはデメリットとして、大きな負担となります。そして、変更という点では、納税だけに限らず、法務の変更も気を付けるポイントです。オフショア法人を設立しようとする国や地域において、設立するための要件なども変更されています。これらも、やはり専門家のサポート無くしては成り立たず、コストがかかるという点ではデメリットかもしれませんが、専門家は設立に関する要件等の変更に敏感なだけでなく、数多の情報を持ち合わせていますので、非常に頼りになる存在です。
次にノミニー制度はデメリットになるかという問題ですが、タックスヘイブンでは、ノミニーという制度を利用できるケースが多くあります。ノミニー制度とは、会社の登記簿に実際の株主や役員ではなく、名義上の代理人が登記されます。これはプライバシー保護を目的とし、広く利用されている制度です。ですが、脱税など違法行為にノミニー制度が悪用されたケースが少なからずあり、ノミニー制度自体がデメリットとして認識されることもあり、レピュテーションリスクを取らないオフショア法人も出てきています。このように考えると、ノミニー制度はデメリットの大きい制度であると考えられがちですが、もともとオフショア法人は、秘匿性の利点を活用し、資産運用管理や信託などで利用される事が多かったため、そのような企業や個人にとっては、相続税の節税ができるメリットがあるかもしれません。ノミニー制度は、元々の意義を間違わずに利用すれば、デメリットとはならない制度と言えます。
タックスヘイブンで設立されたオフショア法人には大きなメリットもあれば、デメリットも少なからず存在します。設立を検討する際には、特に節税という部分で検討を重ねることになります。また、設立手続きには、書類の準備や専門的な知識が必要となり、手間のかかる部分がありますので、検討段階から専門家をサポートメンバーに加えることが、オフショア法人設立に向けての近道になります。専門家の意見を求め、十分な検討を重ねることが、事業の開始から継続的な運営までの手助けになると言えます。