イギリス連邦の一部であるセーシェルは、マダガスカルの北東に浮かぶ115の島から成る小さな国で、「インド洋の真珠」とも呼ばれています。白砂のビーチと美しい海が広がり、世界中のセレブやハネムーナーが訪れる楽園です。オフショア法人を設立する地域としても楽園の要素があり、それはセーシェルが持つその税制に拠るものです。ただ、セーシェルの主産業は観光であり、観光客の誘致に力を入れています。 また、セーシェルは他のアフリカ諸国と比較して治安が良く、凶悪犯罪の発生は少ないと言われていて、この事がオフショア法人を設立する上で大きな理由にもなっています。首都ビクトリアを含め、観光地の治安は安定していますが、近年は若者の間で違法薬物の使用が増加傾向にあり、警察も取り締まりを強化しているので注意が必要ですし、セーシェルの美しいビーチは観光客に非常に人気ですが、貴重品の盗難リスクもあります。ビーチバッグから目を離したすきに、財布やスマホを盗まれるケースが外国観光客を狙ったスリやひったくりなどの軽犯罪は報告されているため、ホテルのセキュリティーボックスを利用するなどし、貴重品を持ち歩くのは厳禁です。そして、首都ビクトリアは、昼間は活気があり治安もいいですが、夜は人通りが少なくなる地域もあります。とくに、繁華街から外れた場所では、スリなどの軽犯罪にあうリスクがやや高まるため、 夜間の一人歩きは控え、複数人での行動が推奨されています。
セーシェルの税制についてですが、同国は法人税やキャピタルゲイン税、または相続税が実質的に免除されている点が特徴です。これは、セーシェル国内で事業を展開していないオフショア法人に対して特に有利な仕組みとなっており、海外での事業収益をセーシェルに還元することなく税負担を最小限に抑えることができます。セーシェルのオフショア法人は、他国で得た収益に対して課税されないため、これにより国際的なビジネス展開がしやすくなるのです。セーシェルのオフショア制度においては、IBC(International Business Company:国際事業会社)という法人形態が広く利用されています。IBCは、設立が迅速かつ簡単であり、取締役や株主の情報公開義務がないため、匿名性を維持しながら国際的なビジネスを行うことが可能です。これにより、投資家は個人情報の保護を図りつつ、柔軟な事業運営ができる環境が整っています。また、設立や維持にかかる費用が比較的低いため、中小企業から大企業まで多くの企業がこの制度を利用しています。これらが、セーシェルをタックスヘイブンとしての地位を確立させています。
また、タックスヘイブンとしてのセーシェルの特徴としては、税制の優遇だけでなく、政治的・経済的な安定性が挙げられます。セーシェルは、政情が安定しており、長年にわたり平和な環境が維持されています。これは、ビジネスを展開するうえで大きな安心材料となります。また、セーシェルは国際的な金融取引に対しても開放的で、外貨の送金や取引に対する規制が緩やかです。これにより、資金の移動が円滑に行えるため、国際的な投資家にとっては非常に魅力的な環境が提供されています。
ただし、国際的な規制が強まる中、セーシェルはこれに対応するための改革を進めています。特に、経済協力開発機構(OECD)による「有害な税制」としての指摘や、欧州連合(EU)からのブラックリスト指定を受けて、セーシェル政府は国際基準に準拠するための取り組みを強化しています。具体的には、透明性の向上や、租税回避に対する取り締まりの強化が行われており、銀行や金融機関に対するコンプライアンス強化も進んでいます。また、セーシェルは金融活動作業部会(FATF)の基準に従い、マネーロンダリングやテロ資金供与の防止に向けた法整備も積極的に進めています。これにより、国際的な信頼を高めつつ、タックスヘイブンとしての地位を維持し、ホワイトリストの指定を受けるまでになっています。
総じて、セーシェルは税制の優遇やオフショア制度の魅力を保ちながらも、国際的な規制に対応するための努力を続けています。タックスヘイブンとしての特徴を持ちながらも、透明性やコンプライアンスを重視した運営方針を採ることで、セーシェルは引き続き国際的なビジネス環境としての地位を確保しています。これにより、今後も多くの企業や投資家にとって、セーシェルは有力な選択肢となることでしょう。